« 定かじゃないが | Main | 喪うもんか。 »

May 16, 2014

ヒョウちゃんや

内田百閒を気取るわけでも、ましてや自分の飼い猫でもないのだが、捜索願いや広告を出したい気分はよくわかる。

いったい、ヒョウちゃんは何処へ行ってしまったのか。


初めて出会い呼びかけられたその路地は、この数年間で両側の家が少しずつ、代わる代わるセットバックを繰り返し
道幅を拡げてきた。

ヒョウちゃんの飼われているお宅の塀の半分が姿を消し、お庭が丸見えになっていることに気づいたのは、一昨夜の
こと。ついにここもセットバックか…と思っただけで、そこに「暮らしが感じられない」ことには気づかなかった。

昨夜の帰り、母屋の一部を噛み砕いたままのユンボがお庭の奥に鎮座しているのを見て、嗚呼大変なことになった…
と、冒頭の気分に至ったわけである。


最後にヒョウちゃんの存在を感じたのは、昨年大晦日に年賀状を投函後に通りかかったお宅の庭の中を歩く鈴の音を
耳にしたとき。

最後にその姿を見たのは、飼い主のご老人が手押し車で朝のごみ出しをするのに並んでついてきて、路地から出てた
ところで鉢合わせ、すれ違いざまの「おはよう」に対して僕を見上げ「にゃ」と挨拶を交わした師走の初めのこと。
そのひとつき前の雨上がりの高山写真館からの帰途、僕の両脚の間を八の字歩きするのに合わせて慎重に歩を進めて
きたが、彼女のテリトリーの堺付近でリズムを崩した僕が彼女の足を踏んづけて飛び退かせてしまったことがあった。
そのときイワゴーさんを真似て呼び戻し仲直りできたと思っていたのが僕の一方的な思い込みでなくてよかった…と
胸撫で下ろしたことを、今でもよく憶えている。


でもやっぱり、しゃがみ込んだ僕の膝の上でのデレデレゴロゴロとか、初めてGXRで写真を撮らせてもらったとき
撮られっぷりだとか、二度目の撮影に臨んだ際、オートハーフSE路面落下事故でドン引きさせながらも関係を修復、
オープンエア・ネコカフェ状態でお腹一杯だったときのような触れ合いは、もう一度…いや、何度もまた味わいたいと
ずっと思ってきた。


あのとき、さらってウチに連れてくりゃよかったんだ…だなんて邪な考えは打っ棄ることにして、何処かで仮住まいを
経て、セットバックが終わって改築されたお宅に戻ってきて欲しいと、切に願っている。

| |

« 定かじゃないが | Main | 喪うもんか。 »

心と体」カテゴリの記事

恋愛」カテゴリの記事

Photography」カテゴリの記事

習志野 / 船橋 界隈」カテゴリの記事

ヤナギタ・クニオー」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ヒョウちゃんや:

» ヒョウちゃん!! [umblog]
いつもの路地のあのお宅。半分遺った塀の向こうの基礎と瓦礫…を飛び越えてくる鈴の音と「にゃあ」。 ヒョウちゃん! [Read More]

Tracked on May 19, 2014 21:26

» 膝乗り三分 [umblog]
20:37 on June 2nd f5.6, 1/5, ISO 1600, Nikon Df with Ai [Read More]

Tracked on Jun 03, 2014 00:04

» A Vacant Lot [umblog]
15:15 on June 11th f5.6, 1/250, ISO 400, Nikon Df with Ai Nikkor 28mm F2.8S and 52mm L37c Filter [Read More]

Tracked on Jun 12, 2014 00:09

» ヒョウちゃんやーい [umblog]
此処で飼われていたのかどうかもはや判らないお宅の建て替えは進み今や内装工事真っ盛りだが、此処をテリトリーに し [Read More]

Tracked on Aug 27, 2014 23:12

« 定かじゃないが | Main | 喪うもんか。 »