夢のつづきの夢
猛烈な喉の渇きで目が覚めた。薄ら明るかったものの、まだ起き出す頃合いではないだろう…と踏んで時計を見ると、三時
十五分過ぎ。やれやれ寝直そうと試みると、我慢できない渇きの背後に…何だろう?得体の知れぬ高揚感が張り付いている。
台所へ水を飲みに向かいながら、目覚める直前まで「いい夢」を見ていたらしいということに気づいたが、その余韻らしき
何かに向けてコップ二杯の水を流し込んでから再び床に就くと、すぐにまどろんだ。
まだ明るい時間だった。シゴトから大急ぎで自宅まで戻り再び出かけようとすると雨が降っている。タオルケットを被って
歩き始めると、暖かくて心地よい。明らかにみっともないはずのその成りは一向に気に懸からないのに、何やら後ろめたい
懐かしさを覚えながら歩く。…それは、まだ右手に杖無しではまともに出歩けず、左手はまるで役立たずだった退院直後の
ある雨の日、二周りほど大きな雨合羽でカラダとリュックを覆い隠して市川リハビリ病院へ通ったときの心持ちに似ていた。
そう感じながら歩いていたのは、毎朝辿っているモリシア西側のバス通り沿いの舗道のようだったが、はっきりとせぬまま
やがて場面が変わる。
一軒のあばら家の正面を右から左へ横切ろうとしている。以前からそのあばら家のことは見知っていて、ふだんは裏側から
眺めているらしい。その裏側へ回り込もうとしたとき玄関の引き戸が音を立てて開いたので、機械的に「こんにちは」だか
「お邪魔します」だか告げて、そのまま右回りに裏側へ出る。
左手に白っぽいコンクリート造りの建物があり、二、三段ほどの階段になった入り口の前に「同級生」が数名並んで立って
いる。「いま一コマ目が終わったとこ…」とか告げてくる彼らは、三十年前の同級生のようでもあり、同級生の三十年後の
姿のようでもあったが、そのことはあまり気に留めず、「教室」へ向かう。
かつてのマンションの一室とはかけ離れた大きな空間に机と椅子がたくさん並んでいるが、教室然とはしていない。かつて
と同じく会議卓のようなレイアウトが真ん中を占め、その傍らには喫茶店の二人向かい合わせ席のようなユニットが数組。
この時点で、三十年前に通っていた学習塾の再現授業が、この場所でI先生ご自身によって「再開」されることを僕は悟る。
コレは、さっき見た「夢のつづきの夢」なのだと合点がいく。にもかかわらず、一向に授業が「再開」される気配はない…
その続きはなく、五時に再び目を覚ました。ここに書いたことを思い出して脳裡に焼き付けようとしながらシャワーを浴び、
そして、これが決して虫の報せなどではないようにと祈った。I先生ご夫妻とは、もう十年以上音信不通のままなのだ。
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