病院と免許更新と
もう、ここへ足を運ぶ段階はとうに過ぎ去ったということなのか。きょう目にした、一面に薄く手垢で覆われた
ような柱や壁や、天井パネルの隅の汚れや染みは、僕がここに入院し通い続けた日々が、大袈裟ではなく
「昔日」と成り果てたことを、これまで何となく気づいていた以上に、思い知らせてくれたような気がする。
頭の手術かあるいは怪我からまだ日が浅いせいなのか、茫とした風情で車椅子に座る同年代くらいの男性
が、親族やケースワーカーに付き添われ、診察室への出入りを繰り返していた。
「ちゃんと動かせば動くようになるんだからな…」と、彼の兄らしき人が励まそうとしている。それを受け止める
風でも聞き流す風でもなく、さりとて、一切が上の空というほど重篤には見えず、ただ、何かを受け容れようと
あるいは受け流そうとしているように見えた。やがて、彼は入院を認められ処置室へと消えた。
まるで、七年前の僕を見ているようだった。
七年前のあの事態を、もしも今迎えていたとしたら…と想像しかけ、その先を考えるのを止めた。
あれはやはり、あの時にあの場所で、起こるべくして起きたことだし、ここでリセットの日々を過ごしたこと、
そこからきょうまでやってきたことやってこれなかったこと、全てに意味があるのだと思い直す。
主治医は、僕の身の上相談に対し、例によって前向きなことしか言わないのだった。きょう、いちばん目から
鱗だったコトバは「何も考えないようにして歩いたほうがいい」
「新型インフル対策のため"無用の"立ち入りは遠慮願います」という謂いの貼り紙に素直に従い、リハビリ室
の入り口から遠く内部の様子を窺っていたら、OTフジコさんに見つかった。当時のOTやPTはもう数えるほど
しか残っていないというが、その何名かの面々が、話に花を咲かせている僕たちのそばをたまたま行き交い、
まるで、その界隈の空気だけが七年前に戻ったようだった。
帰り際、エレベータ脇の「リハビリする石像」が、当時のままの満ち足りた顔でそこにいることに気がついた。
運転免許更新。…ここでもまた、歳月というものを実感させられるのだったw
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