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Feb 25, 2007

水曜

午後、兄から逐次メール・電話が入りはじめる。…覚悟をして病院に泊まり込むつもりでいた
その夜の見通しは、あるいは明るいのかも知れないぞ…と思わせる内容だった。…ところが
18時半過ぎ、「急変。急げ!」という報せに、弾かれるように会社を飛び出す。

すぐに捕まったタクシーの運転手に行き先を告げると、どこからアプローチすればよいかと
尋ねてくる。一瞬腹立ちかけ、早稲田通りの一方通行のことを気にしているのだと思い直し、
神楽坂下のところで降ろすよういったん告げ直す。…が、順天堂大の辺りまで来たところで
入った兄からの電話で、いつものように受付で面会票など書かず"突破する"ように言われる
に至り、ようやくコトの重大さを認識する。…牛込橋から歩いている場合ではない。一刻も
早く辿り着けるルートを思い描く。…クルマで病院を出て左に曲がり、法政大を通り過ぎた
最初の曲がり角、新見附に繋がる橋が外濠に架かっていたはず…。その橋を渡ってすぐに
左折して病院へアプローチするよう再び告げ直す。

神楽坂下を過ぎると、左手の石垣のはるか上を病院の窓の灯りが流れてゆく。…あの灯りの
中で大変なことが起ころうとしているとは俄かに信じ難いが、手を合わせて祈るしかない。

車寄せに滑り込んだタクシーから再び弾かれるように飛び出すと、「父が危篤なんです!」と、
生まれて初めて使う台詞を守衛に浴びせ、エレベータホールまで走る。走れなかったが走る。
閉まりかけたドアに滑り込み5階のボタンを押す。…逸る気持ちよりも些か早くドアが開く。
違和感を覚えながらも飛び出すと、ナーステーションの角を曲がって廊下を走り、トイレの
角を曲がって目指す個室に飛び込もうとするが、入り口の名札が違う。取り乱して傍を
通りかかった看護師を捕まえ必死の形相で問いただすと、そこは4階だった。

取り返しのつかない思いを胸の中で煮え繰り返しながら来た途を戻り、1階上がってまた
走って、ついに父の病室へ飛び込む。促されて掴んだ左手の温かさは頼りなく、辛うじて
血が通っているように感じられた。そしてその直後、父は事切れた。

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心と体」カテゴリの記事

Comments

……すでに気持ちの準備はされていたのだろうと思いますが……
ご愁傷様です。お父上のご冥福を心よりお祈りします。合掌。

Posted by: にしお | Feb 26, 2007 at 09:49

ご愁傷様です。
お父さんもushioさんもお疲れ様でした。

Posted by: 福田 | Feb 26, 2007 at 13:10

お父さん、待っていたんだねぇ。
そんなお父さんの気持ちを汲むことが出来てよかったじゃないか。
お父さんも最後の頑張り、お疲れさまでした。

Posted by: 柳 暖簾 | Feb 26, 2007 at 14:22

みなさま、温かいお言葉本当に有難うございます。

覚悟はしていたものの、あまりに呆気ない幕切れとその後の日々は、淡々と受け容れる
しかないようでいて、うっかりすると込み上げてくるものが抑えられなくなります。
本人はもちろん、百数十日間ずっと付き添ってきた母も限界に近づいていましたから、
ここいらが潮時だと見極めたのでしょうか。

Posted by: USHIO | Feb 26, 2007 at 16:55

お父様のご冥福を心からお祈りいたします。

Posted by: まきねえ | Feb 26, 2007 at 20:52

なんつーか、  ここ数日書いては消し 書いては消し。
この歳になっても このような状況において友人に掛けるべき自分の言葉を
僕は持ち合わせません。

ただ、あまり頼りにはなりませんが、
あなたの息子さんには ちゃんと友人がいますよって申し上げる事が、
お父さんに対しては 一番の供養かなと、そんなふうにも思います。

Posted by: x046 | Feb 26, 2007 at 22:33

お父様、最後まで頑張られたんですね。

ごめんなさい、ここのところ自分の事でいっぱいいっぱいでumさんの様子がおかしいとは思いながらも声がかけられずにいました。
僕は少し持ち直してきたので、今週末どうかとメールしようと思った矢先でした。

僕の母は僕たち兄弟が一休みするために病室を出たのを確認したかのうように、急に亡くなりました。
死の瞬間をどうしても僕に見せたくなかったんだろうと思いますが、当時はそれが余計に悲しかったのを今でも覚えています。
たぶん母はクソガキだった僕をおもんぱかったんでしょう。
umさんのお父様はあなたが手を握るのを確認して、安心して旅立たれたんでしょうね。
きっとお父様は幸せ一杯だったと思います。

お母様の体調にも十分気をつけてあげてください。
お父様のご冥福をお祈りします。

Posted by: まにゃん | Feb 27, 2007 at 01:02

お父様のご冥福をお祈りします。

お手伝いすることがあれば何なりといってくださいね。

Posted by: PALMS | Feb 27, 2007 at 07:35

みなさま有難うございます。父への何よりの餞です。

Posted by: USHIO | Feb 27, 2007 at 22:48

お父様が安心して旅立てるよう、笑顔で送り出してあげましょう。
ご冥福を御祈りします。

Posted by: M9 | Feb 28, 2007 at 01:26

早いもので、きょうで一週間経ってしまいました。
有難うございます。そうですね、笑顔じゃないとカラダに力が入らない。

Posted by: USHIO | Feb 28, 2007 at 12:37

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