テレビカード
たいていの場合、心配事はただの取り越し苦労に終わる…いや、それは一時的にであって、
「終わり」をひとまずは先送りにしてくれたに過ぎない…というところに思いが至った今では、
一昨夜来の気分に近いところにまで引き戻され、まだしも神妙でいられる気がする。
だが、数時間前僕の前にいたのは、ままならぬ現状に不平を述べる元気な病人だった。
傍目には罵りあいにも映るほどハラハラした母とのやりとりは、故あって再び同じ屋根の下で
暮らすことになった数年間の日々を思い起こさせ、その頃のやりきれなさが懐かしく甦ってくる。
苦笑を禁じえなかった。
不意にテレビからテレビカードが吐き出されてきた。すかさず母が新しいカードを挿入しようと
するが、出てきた口とは違うただの窪みに押し付けようとするものだから、入るはずがない。
ベッドの上でその様子が視界に入らない父に代わり、ツッコミを入れるのは僕の役目だった。
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