ヤツもこれから

いいかげん"華"なんかよりも実利を採るお年頃ｗ、ヤツと落ち合う場所と定めたのは
アルタ前とか紀伊国屋前とかじゃなくて、JRの東口中央改札を出たところだった。

約束の時刻に数分遅れて改札口まで辿りつき、自動改札機の向こうに目線を遣るや否や
一瞬でフォーカスが定まる。相変わらず眉間に皺を寄せ藪睨みでヤツが立っていたからだ。
そして向かった先は、この数年というもの新宿に出向く目的となっている「やんばるつばめ食堂」だ。

ヤツが初めて接したという沖縄の酒や肴とともに過ごした数時間、「海馬ってスゴイな…」と
改めて感じ入った。十数年ぶりに思い出すあれこれを通り越し、三十年近く昔の小学校の
同級生の消息にまで話は及んだ。
ヤツの出身校である県下一の中高一貫進学校に当時の僕の友人も進学しており、ヤツは
彼と交友があったことなどを、それこそ二十年ぶりに思い出した。

とはいえ、大袈裟ではなく胸を打たれたことがある。人間誰でも"自らのペースで"変わって
ゆけるのだな…と。二十年前、自ら思うアイデンティティと周囲が感じるソレとのギャップに
無頓着で、かつ、その事実にすら全く眼が向いてなかった(…と、当時の僕は看破していた)
ヤツが、今やそのことには気づいていた。…尤も、ソレは他人事ではないのだがｗ

…快速運転を終了した中央線でお茶の水まで来て、津田沼止まりの総武線に乗り込む。
発車を待っていると、矢野顕子の唄う「中央線」がイヤホンから流れてきた。走り出せ…